1988年に発表された男性1人と女性1人からなる音楽ユニットPSY・S(サイズ)のこのアルバム「NON-FICTION」が、例えば、80年代を代表するまでの大名盤として、紹介されていることを寡聞にして知りませんが、私的大名盤として、取り上げさせてもらいます。
逆説的ですが、昨今のJ-Popシーンを席巻するKing Gnuの大躍進を眺めて、当時のPSY・Sが、現在のKing Gnuに、売り上げ面でも世間の認知度でも及ばない存在かもしれませんが、80年代のKing Gnu的存在(ガラパゴス的な日本的音楽の進化形態としての相似)として位置付けて、私的な再評価をしているところです。
King Gnuの楽曲のクオリティの高さには、目を見張る一方で、ミクスチャーバンドとしてのKing Gnuのスタイルや音楽的構成に、PSY・Sとの類似性を感じます。そもそもPSY・Sは、YMOのフォロワーとして、デジタル楽器を縦横に駆使し、ロックや歌謡曲、ジャズなどの音楽的ルーツをポップスとして深化させました。
デジタルと生音の絶妙な組み合わせ、メンバーのコンポ―サーによる計算されたコードワークとイントロからアウトロまでの隙のないアレンジ等々に、重なる点が多く見られ、むしろ、既視感を覚えるKing Gnuの音楽は、J-Popの革新ではなく、保守本流に位置するものではないでしょうか。
しかしながら、その双方の音楽的成立要素や構成との類似性を見失わせてしまうのは、PSY・Sが、出自をジャズシンガーとするハイトーンでの強い声を持った空前絶後とも言える女性ボーカリスト(CHAKA)を携えていたことにあるでしょう。
いずれにしても、その真骨頂を様々なスタイルで収録全曲に示したPSY・Sの「NON-FICTION」は、決して、団塊ジュニア世代の懐古主義ではなく、J-Popの開祖的名盤として評価をさせてもらいます。
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