私的名曲群 1985年の筒美京平作品

名盤

 筒美京平の訃報が届けられました。説明不要の日本歌謡界最大のヒットメーカーです。これからは、その偉業に対して、多くのコメントや論説が発せられ、また、イベントやアーカイブ発掘作業などが行われるでしょう。長くヒットメーカーとして一線で活躍していた当時からこれまでに、その大衆性から、文化的な地位や近現代音楽史の中での音楽家としての評価が、疎かにされている側面がありましたが、今後は、あらためて、その偉大さが正当に検証されていくものと思われます。(但し、その評価の中で、今の政権が、万が一にも国民栄誉賞を与えるという事態は、避けてもらいたいと思います。このような大衆文化を勃興して、評価するのは、あくまで市民の手中にあるからです。)

 ここでは、団塊ジュニア世代である私自身の筒美京平作品の私的名曲を挙げていきますが、私的な名曲は皆無で、どれもヒット曲(公的名曲)であることはおろか、国民的名曲と呼んでよいものもあるかもしれません。

①「C」 中山美穂 (1985年6月21日発売) 音域が広くないため、一聴すると単調な感じを受けますが、全くそんなことは無く、Aメロ(裏拍から入ります)・Bメロ(リズムが跳ねます)・Cメロ・Dメロ(?)・サビ・ブリッジとこれでもかとフックのあるフレーズがもったいないぐらいに連なっており、最初から最後まで、聴き飽きさせることはありません。アレンジは、シンセベースにシンセドラムで、シンセサウンドを基本としているものの、そのジャストな疾走感、気持ち良さに加えて、決して、メロディラインを邪魔することなく、それを生かした絶妙なドラムパターンやフレーズが随所に盛り込まれています。これまた天才を冠されるアレンジャーの萩田光雄が編曲をしています。

②「あなたを・もっと・知りたくて」 薬師丸ひろ子 (1985年7月3日発売) 当然、Aメロ(裏拍から入ります。この辺り、リズム・テンポ・曲想は違えど、実は「C」と構図が似ています。)からサビまで、どこを切り取っても、美しく、特に「もしもし、私、誰だがわかる?」というセリフからの流麗なメロディとコードワークには胸を締めつけられます。しかしながら、それは、このサビのメロディラインの上に「もっともっと」という言葉を擬音語的に巧みに乗せたからこそ生まれたものであり、しかも、その感情がサビでクライマックスとなるように、Aメロ、Bメロで、多くの表現が仕掛けられています。この曲は、作詞者であるこれまたヒットメーカーの松本隆の作品としても名曲であります。

③「卒業」 斉藤由貴 (1985年2月1日発売) この曲は、斉藤由貴のデビュー曲ですが、徹底した斉藤由貴に対する事前調査が行われたとのことで、彼女のイメージから落とし込まれた松本隆の手による詩が用意されました。その結果、思春期の女の子の卒業における「別れ」と「希望」の二律背反した感情を巧みに表現した(メジャーコード進行なのに切ないメロディを乗せる)メロディラインを有したこの楽曲に、斉藤由貴の瑞々しい歌唱が加わり、見事に名曲として産み落とされたのでした。

④「Temptation(誘惑)」 本田美奈子 (1985年9月28日発売) 私自身が、親からのおつかいに行かされた近所のスーパー(西友)でこの曲がかかっており、もう、レジでの清算も終わり、袋詰めも終わっていましたが、曲が終わるまで聴き入り、店を立ち去ることができませんでした。そういう思い出の曲です。

余計なバイアスがかからないよう、ネット等で資料などを見ずに、純粋に思いついた曲を一旦、4曲並べてみましたが、全て、1985年の発売でした。1985年だけで、この名曲群です。唖然とするのみです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました