竹内まりやの1984年発売の傑作アルバム「ヴァラエティ」は、昨今のシティポップブームのアイコン的な存在となっており、中古のアナログ盤は価格も高騰しています。しかしながら、1988年の発売当時ティーンエイジャーであった自身にとっての「ヴァラエティ」的スタンスのアルバムは、この「種ともこ」の「ベクトルのかなたで待ってて」になります。
竹内まりやの「ヴァラエティ」は、そのタイトルどおり、収められた各曲は、竹内まりやの様々なルーツミュージックを引用しながら、優れたアレンジ(山下達郎の手による)をもって、まさに、シティポップというジャンルを構築するに至る楽曲群に昇華されています。
一方、竹内まりやと同様シンガーソングライターである種ともこのアルバム「ベクトルのかなたで待ってて」は、当時のシングル曲等の寄せ集め的な要素もありますが、結果として「ヴァラエティ」に富む構成内容になっており、収められた各曲には、竹内まりやと同様、種ともこの持てる音楽的知識、素養が遺憾なく発揮され、当時の自分にポップスの楽しさを教えてくれるとももに理解を深めさせてくれる極上の作品でした。この作品との出会いが音楽的に多感な時期(15歳前後の頃)であったため、世間的な評価とは違い自身にとっての「ヴァラエティ」(的存在)は、この作品となりました。
ただし、この「ベクトルのかなたで待ってて」が、例えば、昨今のシティポップ発掘の流れで再評価されるかどうかは、シティポップの特質が日常性・土着性からの脱却である以上、この作品の魅力が、むしろその日常性・土着性にあることから、評価をされることは難しいところですが、いささかも埋もれさせることの出来ないポップス作品の逸品であることには間違いありません。
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