最近のヒットチャートの指標となる単位は、「枚」ではなく、いつの間にか、すっかり「回」となっています。つまり、音楽サブスクリプションサービスの再生回数がその指標となっており、数年前までの握手券なるおまけを付けて、物理的な媒体の購入枚数の向上に血道を上げていたのが、今では、本来の楽曲の持つパワーにより依拠しなければ、それはヒット曲になり得ない状況になっています。
このサブスクリプションサービスは、言わずもがな何千万曲の中から、月額料金を支払いさえすれば、好きなだけ自由に聴くことができるものです。つまり、CDなどのような購入媒体には必要であったある種の課金制度という制約がなくなり、格段に自由に楽曲を聞くチャンスが得られました。
しかしながら、実際は、このサービスから導かれるヒットチャートはむしろ、長期間に渡る一極(曲)集中の傾向が強く見られるようです。これは、曲の聴き方として、簡単に再生・停止できることで、より簡単に、短時間で耳障りの良い曲に到達することができるようになった結果と思われます。こうした状態で、多く再生されている曲は、一部を聴いても、全部を聴いても、初めて聴いても、何度聴いても、良く聴こえるクオリティの高い曲であることは、間違いありませんが、埋もれている何千万曲の中には、一聴しただけでは、魅力が分からない聴き手の能力を問われるような名曲も数えきれないほどあり、それには到達できていない人も、同時にたくさん生み出しているでしょう。
近年、アナログレコードが再評価されているのは、主に音質面とその聴く際のスタイルということになるのでしょう。しかし、アナログレコードの一度聴き始めたら、途中を飛ばすことの出来ないこの強制が、聴き手に対して、ある種の修行のような行為となり、それが、聴き手に新たな耳馴染みを産み出し、味わうことのできる楽曲の範囲を拡充させること、それこそが、レコードを聴くことの評価される最大の秀逸な点ではないでしょうか。
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